MIDS ―― 発行と、自らを縛る規律
Midas Chain のトークンであり、発行体は Krysos である。何が実在するのか、何が文言ではなくコードによって担保されているのか、そして設計に働く力のうち我々に不利なものは何か。いずれも省かずに記す。
要旨
MIDS は Midas Chain のネイティブトークンであり、その発行体は、Midas 取引所とは別法人の Krysos である。トークンの発行と取引所の運営を、同一のバランスシート、同一の規制上の立場に置かないための構成である。
本書は一つの原則に従って書かれている。ここに記した主張はいずれも、実物を提示できるコードによって担保されているか、まだ決定していない事項として明記されているかのどちらかである。数値が未設定であれば、推計を事実として示すことはせず、未設定と記す。
- 供給上限は、流通量ではなく累計発行量に対して課される。したがってバーンは恒久的であり、焼却されたトークンが新たな発行余力として戻ることはない。
- 販売はトランシェごとに行い、各トランシェには開始前に公表される上限を設け、自動停止の仕組みを伴う。上限は、それに達する前に開示される。
- 現時点で、自己循環によらない実質的な規模の需要の受け皿は存在しない。本書はこれを省かずに明記する。
供給と配分
総量 200 億 MIDS を五つの枠に配分する。これはバーン前の数値であり、供給量として存在する数値はこれ以外にない。本書の以前の草案ではこれを 10 億としていたが、ローンチ前、まだ 1 トークンも発行されていない段階で 200 億に引き上げた。
| 配分枠 | 比率 | MIDS | 放出条件 |
|---|---|---|---|
| トークン販売 | 50% | 10,000,000,000 | パートナープログラムの放出原資。§3 およびトークンページに記載する段階的な上限に従って放出する。 |
| トレジャリー | 20% | 4,000,000,000 | マーケットメイク用の在庫およびプロトコル準備。マーケットメイクは実在の在庫のみで行い、仮想在庫は用いない。 |
| 投資家 | 10% | 2,000,000,000 | 12 か月のクリフを置き、その後 24 か月かけて均等に放出。 |
| コアチーム | 10% | 2,000,000,000 | 12 か月のクリフを置き、その後 24 か月かけて均等に放出。 |
| マーケティング | 10% | 2,000,000,000 | 10 億枚は販売実績に応じて権利が確定するディストリビューター・ランク報奨、残る 10 億枚は会社準備として留保。 |
上限を発行量で測る理由
上限は、現在流通しているトークン数ではなく、これまでに発行されたトークンの累計に対して判定する。
バーンできるトークンで上限を流通量基準にすれば、180 億トークンを焼却した発行体には、そのまま 180 億トークン分の新規発行余力が戻ってくる。デフレ的だという主張は、バーンが恒久的である場合にのみ成り立つ。
需要――実態のとおりに
トークンのホワイトペーパーの多くが、願望の一覧を並べる箇所である。本書はここに棚卸しを置く。現時点で中身が空の項目も、そのまま示す。
| 需要の受け皿 | 状況 | 評価 |
|---|---|---|
| 市場上場保証金 | 実装済み | 構造として実質を伴う唯一の受け皿。市場を開設するには MIDS のロックが必要で、必要額はレバレッジ、資産クラス、建玉上限に応じて決まり、義務の不履行時には没収される。コードは動作しテストも通っているが、パラメータは未設定であり、オンチェーンの MIDS が存在することが前提となる。 |
| チェーンのガス代 | 設計済み | 実在するが規模は僅少。1 取引あたり 1 セントの何分の一という水準では、1 日 100 万取引でも需要は約 1,000 ドルにとどまる。誤差の範囲であり、それ以上のものとして示すことはしない。 |
| 手数料割引ステーキング | 未実装 | 個人向けの取引手数料は設計上ゼロであるため、割引を個人の誘因にすることはできない。ステーキングの対価となり得るのは、メイカーリベート、API の上位ティア、上場保証金の減額である。 |
| 予測市場のステーク | 未実装 | 存在しない。市場の作成は管理者に限られ、MIDS による保証金も伴わない。 |
| ゲーム内経済 | 差し引きでマイナス | ゲームはトークンを配布する一方、回収先は装飾アイテム一つに限られる。需要の源泉ではなく、供給の蛇口である。 |
| 収益によるバイバック | 条件付き | 算式は公表され、保険基金への充当が優先される。近い将来に見込まれるいかなる収益水準でも、市場に出る量に比べれば僅少である。 |
所見
現時点で、自己循環によらない実質的な規模の需要の受け皿は存在しない。上場保証金はそれになることを意図して設計された仕組みであり、図解ではなく実際に動くコードとして存在する。ただし一度もデプロイされたことがなく、パラメータは未設定で、前提となる市場運営者の層もまだ存在しない。
本トークンを評価する者は、これを中心的な未解決の論点として扱うべきである。そして、この点に触れていない文書は、それを省いたものとみなすべきである。
パートナープログラムと、その代償
トークン販売枠の大部分は、パートナープログラムを通じて配分される。そのプログラムは同時に、本トークンにかかる売り圧の最大の発生源でもある。この二つの事実は、同じ節に置かれるべきものである。
参加者は、300 日かけて放出されるパッケージを購入する。放出分は米ドル建てで積み上がり、保有者が請求した日の市場価格で MIDS に換算される。その際、公表済みのスプレッドが差し引かれ、1 日あたりの換算枠、1 人あたりの上限、異常な価格変動に対するサーキットブレーカーが適用される。
債務が米ドル建てであり、決済が MIDS で行われる以上、市場に到達するドル額はトークン価格に左右されない。価格が下がっても売却額は減らず、同じドル額を渡すために必要なトークン数が増えるだけである。
上限こそが制御手段である理由
初年度の請求額は販売額に比例し、販売の規模や価格にかかわらず、プログラムが受け取る 1 ドルごとに最大 1.89 倍となる。そのうち 70% が売却されると仮定すると、単独で相手方となるマーケットメイカーが要する資金は、プログラムの総調達額を上回る。
どれだけマーケットメイク予算を積んでも解決せず、上場時の価格でも解決しない。市場に出る量が価格に依存しないからである。これを減らせる手段は、累計販売額に上限を設けることだけである。
リスク
列挙して差し障りのないものではなく、実際に重要なものを挙げる。
- 薄い需要に対する継続的な放出。上場保証金による需要が現実のものとならなければ、発行体以外に実質的な買い手は存在しない。
- 発行体は、自らのトークンについてショートポジションを抱えている。米ドル建ての債務を MIDS で決済する以上、価格が下がれば弁済に要するトークン数は増える。ここに価格を支えようとする誘因が生じる。これは開示すれば足りるものではなく、構造として抑止しなければならない。
- 外部監査は未実施。コントラクト層は広範なテストを経ているが、外部のセキュリティ監査は受けていない。自らの準備状況評価においても、これが変わるまで実際の資金を預かってはならないと記している。
- 価格はまだ市場が決めたものではない。MIDS が第三者の実際の注文フローの中で取引されるようになるまで、いかなる価格も発行体が算出した数値にすぎない。
- 保有の集中。合計 60 億 MIDS の三つの配分枠が時間をかけて権利確定し、請求による放出量に上乗せされる形で市場の重しとなる。
- 規制。利用の可否は法域と本人確認の結果に左右され、アクセスは拒否されることも、事後に取り消されることもある。
実装済みの範囲
実装済みのコードと、構想にとどまるものとを切り分けて示す。ロードマップを製品として提示することが、この種の文書に最も多い誤りだからである。
| 構成要素 | 状況 | 備考 |
|---|---|---|
| トークンコントラクト | 実装済み | 上限付き、発行権限は限定、バーンは恒久、累計発行量に基づく管理。 |
| 無期限先物、オプション、クロスマージン、オラクル、ボールト | 実装済み | Solidity 約 12,000 行。106 のスイートで 1,018 件のテストが通過。 |
| マーケットファクトリーと上場保証金 | 実装済み | リスクに応じた保証金額、スラッシング、撤退条件を実装。パラメータは未設定。 |
| 報酬計算エンジン | 稼働中 | 報酬プランの全体を実装。支払処理は二人承認制、債務台帳は追記のみ、比例按分による上限を適用。 |
| 外部監査 | 未着手 | 独立した 2 社に順次依頼し、修正後の再監査と、原資を確保したバグバウンティを行う。 |
| チェーンの構築 | 未着手 | ネットワークは未構築。テストネットを含め、いかなるネットワークにもコントラクトをデプロイしていない。 |
| MIDS の上場 | 未着手 | 稼働しておらず、取引もできず、発行済み供給量はゼロである。 |
| オンチェーン発行と残高照合 | 未着手 | 現時点の MIDS は、内部台帳上の残高として存在するにすぎない。これをオンチェーンへ移すことは独立した一つのプロジェクトであり、資金経路として相応の厳格さを要する。 |
Krysos はデジタルトークンを発行する。本ページのいかなる記載も、募集、勧誘、または投資助言ではなく、いかなる収益の約束または予測でもない。デジタル資産は価格変動が大きく、投じた金額の全額を失う可能性がある。利用可能性は居住国および本人確認に依存し、アクセスは拒否または撤回されることがある。供給および発行に関する数値は本システムの設計を説明するものであり、価格または価値の予測ではない。